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東京高等裁判所 平成6年(う)446号 判決

本店所在地

山梨県韮崎市富士見三丁目七番二九号

富士島建設株式会社

右代表者代表取締役

井上勲

本籍

山梨県韮崎市富士見三丁目二六〇三番地

住居

同市富士見三丁目七番二九号

会社役員

井上勲

昭和六年一月一〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、平成六年三月一日甲府地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人らからそれぞれ控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官佐渡賢一出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

原判決中被告人井上勲に関する部分を破棄する。

被告人井上勲を懲役一〇月に処する。

被告人井上勲に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

被告人富士島建設株式会社の本件控訴を棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人関野昭治名義の控訴趣意書に記載されたとおり(量刑不当の主張)であるから、これを引用する。

そこで、原審記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも併せて原判決の量刑の当否について検討する。

一  本件は、土木建築請負業を目的とする被告人富士島建設株式会社(以下「被告会社」という)の代表取締役としてその業務全般を統括していた被告人井上勲(以下「被告人」という)が、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、外注費等の水増し計上、従業員給与手当の架空計上及び売上の一部除外などの方法により所得を秘匿した上、(1)平成元年五月期における実際所得金額が一億二七五五万二六五六円であったにもかかわらず、所得金額が九二五四万七一〇〇円でこれに対する法人税額が三七〇一万七五〇〇円である旨記載した虚偽過少の法人税確定申告書を所轄税務署長に提出してそのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、正規の法人税額との差額一四六九万四五〇〇円を免れ、(2)平成二年五月期における実際所得金額が一億一二六九万六五二一円であったにもかかわらず、所得金額が七五三二万二〇九〇円でこれに対する法人税額二八五三万三二〇〇円である旨記載した虚偽過少の法人税確定申告書を所轄税務署長に提出してそのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、正規の法人税額との差額一四九四万四三〇〇円を免れ、(3)平成三年五月期における実際所得金額が九一四四万二二九四円であったにもかかわらず、所得金額が三九四九万九六四六円でこれに対する法人税額が一三八七万七八〇〇円である旨記載した虚偽過少の法人税確定申告書を所轄税務署長に提出してそのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、正規の法人税額との差額一九四七万八七〇〇円を免れた、という事案である。

右のとおり、本件は、三事業年度にわたり被告会社の法人税合計四九一一万七五〇〇円を逋脱したというものであるが、その主たる犯行動機は、被告人ら家族のために蓄財をしたり、様々な使途の裏金を捻出したりすることのほか、同業者の納税状況を見聞きして正直に納税するのが馬鹿らしくなったなどというおよそ弁解の余地のないものであり、また、所得秘匿の手段・方法も、多数の取引業者に対して外注費等の水増しを要求して虚偽の金額を記載した請求書や領収書等を作成・発行させたり、毎月、ほぼ一定額の従業員給与手当を架空計上するなどしており、格別巧妙とまではいえないものの、多数の工作を日常的に重ねた悪質な犯行といわざるを得ない。以上からすると、被告会社及び被告人の刑事責任を軽視することは許されない。

所論は、被告人が一年以上の懲役に処せられると、建設業法八条一項七号、五号、二八条、二九条により、被告会社の建設業者の許可が取り消されるほか、被告会社に対し営業停止処分がなされることになって不当であるから、被告人に対しては一年未満の懲役をもって臨むのが相当である旨を主張するが、本件の量刑に当たって考慮すべきは法人税逋脱事犯としての責任の軽重であり、他方、建設業法は、各種犯罪により建設業者やその法人の役員らが所定の刑罰を受けた場合に、同法自体の要請(同法一条参照)に基づいて許可取消事由等を定めたものと解されることからすると、具体的量刑に際し、同事由等に該当しないよう優先的に配慮することは本末転倒というべきである。したがって、法人税逋脱事犯としての量刑の結果、所論指摘の許可取消事由等に該当することになるとしてもそれはやむを得ないところであり、所論をそのまま採用することはできない。

二  しかしながら、本件については、逋脱額の合計が前示のとおり五〇〇〇万円に満たないものであるほか、逋脱率も平成元年五月期が約二八・四パーセント、平成二年五月期が約三四・三パーセント、平成三年五月期が約五八・三パーセント(三事業年度を通じて約三八・二パーセント)であって、それぞれ高額高率とはいえないこと、逋脱本税、重加算税及び延滞税等は、修正申告の上、原判決までにすべて納付済みであること、被告人において、真剣な反省の態度を示し、再び同様の過ちを犯さない旨を誓っていることなど被告人らに有利な事情が認められ、これらの諸点及び犯情の類似した同種事案に対する科刑の状況に徴すると、被告会社を罰金一二〇〇万円、被告人を懲役一年(三年間執行猶予)に処した原判決の量刑は、被告会社に対する科刑において相当ではあるものの、被告人に対しては懲役刑の刑期においていささか重過ぎるものといわざるを得ない。結局、右の限度で論旨は理由がある。

三  結論

1  刑訴法三九七条一項、三八一条により原判決中被告人に関する部分を破棄し、被告人に対し、同法四〇〇条ただし書に従い、更に次のとおり判決する。

原判決の認定した事実に刑種の選択、併合罪の処理の点を含めて原判決と同一の法令を適用し、その刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

2  被告会社については、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却する。

(なお、公訴事実記載の被告会社の各事業年度の実際所得金額の内訳を明らかにするため原審検察官が冒頭陳述において主張した各年度の修正損益計算書によれば、「謝礼金」勘定の中に、被告会社が、所得秘匿の手段である外注費等の水増し計上に際し、これに協力した各取引先に報酬として支払った金額(平成元年五月期二三四万円、同二年五月期三一七万一〇〇〇円、同三月五月期四一一万円)がそれぞれ損金として計上されているところ、原判決は、修正損益計算書を添付することなく、罪となるべき事実として公訴事実と同一の事実を認定しているので、被告会社の各事業年度の実際所得金額の内訳についても右冒頭陳述と同一の金額を認定したものと解される。しかるところ、右支払報酬は、外注費等の水増し計上という公正妥当な会計処理基準に反する処理に対する対価として支出されたいわゆる「脱税経費」にほかならないから、法人税法上費用又は損失として損金計上することは許されないものと解するのが相当である(最高裁判所平成六年九月一六日第三小法廷決定・裁判所時報一一三三号五頁等参照)。してみると、原判決は、本来損金計上の許されない支出を損金に計上した結果、被告会社の実際所得金額を過少に認定したものといわざるを得ない。しかしながら、そのことは、検察官において実際所得金額を過少なものとして構成した訴因に拘束された結果であって、原審に訴因変更を促し又は命ずるまでの義務があったとまでは認められない本件にあっては、原判決に法令解釈を誤った違法があるものということはできない。)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 半谷恭一 裁判官 森眞樹 裁判官 林正彦)

平成六年(う)第四四六号

○控訴趣意書

罪名法人税法違反 富士島建設株式会社

被告人 井上勲

右被告人に対する頭書被告事件につき、被告人が控訴した趣意は左記の通りである。

平成六年五月六日

右被告人弁護人弁護士 関野昭治

東京高等裁判所第一刑事部 御中

平成六年三月一日甲府地方裁判所刑事第一部は、検察官が被告人富士島建設株式会社(以下単に被告人会社という)に罰金一五〇〇万円、被告人井上勲に懲役一年をそれぞれ求刑したのに対し、被告人会社に罰金一二〇〇万円、被告人井上に懲役一年、三年間執行猶予の判決を言い渡した。

しかし特に原判決が被告人井上に対し、その刑の執行を猶予したものの、懲役一年の刑を科した点において量刑重きに失し不当であり、破棄を免れないと思料する。以下その理由を述べる。

第一 刑の量定と建設業法との関係について

一、被告人会社は建設業法第三条に基づき山梨県知事の許可を受けて建設業を営む建設業者である。

ところで建設業法第二九条は「建設大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号の一に該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。」と規定したうえで、その第二号において「第八条第一号又は第五号から第八号まで(第一七条において準用する場合を含む。)のいずれかに該当するに至った場合」と規定する。

同条同号が建設業者の許可の取消事由として挙示する事項の一つである同法第八条第五号は「一年以上の懲役若しくは禁固の刑に処せられ、又はこの法律の規定により、若しくは建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で定めるものにより罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者」と規定しており、また同条第七号にあっては「法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに、第一号、第二号、第四号又は第五号に該当する者(カッコ内略)のあるもの」と規定している。

被告人井上は被告人会社の代表取締役であって、同法第八条第七号に規定するところの法人の役員であることから、その被告人井上が本件により懲役一年の懲役刑に処せられた以上、この判決が確定すれば、当然のことながら、同条第五号に該当することを理由に、同法第二九条によって山梨県知事による被告人会社に対する建設業者の許可が取消されることになるのである。

二、端的に訴えるならば、被告人井上に対する判決が懲役一年未満即ち懲役一年の刑が一日でも短縮、減少されるならば、被告人会社は建設業法における前記各規定の適用を受けることがなくなり、当然のことながら、建設業者の許可の取消は回避し得るのである。

このような理由から、被告人会社の命運をかけ、本件訴訟に及んだものであるが、若し一審判決の通り、被告人井上に対する懲役一年の刑が確定したとするならば、被告人会社の建設業者の許可が取消されることになるため、これを回避するには被告人井上が右判決の確定以前に被告人会社の役員たる地位を辞する以外に方法がないのである。

しかし、被告人会社は株式会社を名乗るものの個人企業の域を出ない経営形態であって、被告人会社の受注活動のほかその営業活動の総てを直接統轄、担当している実情にあるため、被告人井上が被告人会社の経営から退いた場合、被告人会社の機能は完全にマヒし、事業の遂行はほとんど不可能となってしまうことは明らかである。

従って、被告人会社の建設業者の許可の取消を回避するために被告人井上が被告人会社の役員を辞職したとしても、被告人会社の存続は全く期待できないのであって、早晩倒産の危機が訪れることは否定できないところであり、結果的には被告人井上が辞職しないことによって被告人会社の建設業者の許可の取消を受ける場合と同様の事態が到来するものと考えざるを得ない。

若し、被告人会社の建設業者の許可の取消、あるいはこれを回避するための被告人井上の役員の辞職によって、被告人会社が存続できなくなったとすれば、被告人会社の従業員約四〇名、及び、被告人会社の存在を営業基盤とする下請会社七社の従業員約一〇〇名が失業し、路頭に迷う悲惨な状態を招くことになりかねないことを深く危惧するものである。

三、平成六年三月二四日、当職及び被告人井上において山梨県土木部監理課に赴き、同課副主査小田切正一(山梨県中巨摩郡敷島町吉沢一四一居住)に面接し、被告人井上に対する第一審判決にともない、これが確定した場合の山梨県の行政処分の意向を質問したところ、右小田切副主査は、被告人井上に対する懲役一年の判決が確定した場合、建設業法第八条第五号の趣旨に則り仮に被告人井上が被告人会社の役員を辞職したとしても、同法第二八条に基づき被告人会社に対し相当期間の営業停止処分を行うことは避けられない旨断言した。

右小田切副主査の説明によると、営業停止の行政処分がなされた場合、現に施工中の工事の続行が除かれるものの請負契約のための見積り等の準備行為も含め、建設業者の業務全体がその対象となり、一切の対外活動が禁止されるとのことであったが、右行政処分は全体的な営業活動ができなくなることから、その影響は、単なる公共事業の指名停止の比ではなく、まさに営業停止期間の如何によっては建設業者の存続に関わる程その事業に多大な損害をもたらす内容のものであることは明白である。

以上の事実を繰り返して申述するに、建設業法第八条第五号、第七号及び第二九条第二号の規定により、被告人井上が原判決により懲役一年の刑に処せられ、これが確定するとなれば、被告人会社の建設業者の許可が取り消され、仮にこれを免れるため被告人井上が被告人会社の役員を辞任するとしても、被告人井上が経営に関与できなくなることにより、被告人会社の存続が不可能になることが予測され、これに拍車をかけるごとく同法第二八条による営業停止の行政処分を受ける必然性もあるなど、俗な表現を用いるならば踏んだり蹴ったりの事態を迎える結果になることが明らかである。

これらの不幸な事態を回避するために、是非とも被告人に対し懲役一年の刑を言い渡した原判決を破棄し、懲役一年未満の刑を言い渡されたく、心から陳情するものである。

第二 量刑上の諸事情について

一、本件の脱漏所得は三事業年度の合計額が一億二四三二万二六三五円であり、又その脱税額は四九一一万七五〇〇円であって比較的寡少な金額である。

たまたま、本件判決を言い渡した裁判所と同じ甲府地方裁判所において、平成五年八月二〇日判決の言い渡しがあった被告人郷土料理店株式会社「甲州ほうとう小作」、及びその代表取締役である被告人同清水秀男こと韓秀男に対する法人税法違反被告事件についてその量刑をみるに、同事件は三事業年度にわたる脱漏所得が一億三七〇〇円であり、その脱税額は三九〇〇万円であるが、同裁判所は会社に対し罰金一二〇〇万円、韓秀男に対し懲役一〇月三年間執行猶予の判決を言い渡した。

本件と右事件を対比するに、その脱漏所得、及び、脱税額はその規模においてそれ程の差はなく、又その手口その他の犯情においても特にその量刑において差異を認めるべき特段の事情は存しないようである。従って、本件についても、被告人井上に対する量刑にあたっては、前記韓秀男に対する量刑と同じく懲役一〇月程度の減刑判決があって然るべきであると思料する。

二、本件については、被告人会社が東京国税局から査察調査を受けたことをはじめとして、以来同国税局が甲府地方検察庁に告発したこと、同検察庁が甲府地方裁判所に被告人会社、及び、被告人井上を起訴したこと、本件の審理が同裁判所において行われたこと、その結果被告人会社が罰金一二〇〇万円、被告人井上が懲役一年三年間執行猶予の判決を受けたことなど、逐一新聞等で大々的に報道されたことから、本件脱税が山梨県全域に亘って県民の知るところとなった。

これがため被告人会社の信用度が極度に下がり営業活動上多大の影響を受けたのみか、被告人井上にあっては精神的に筆舌し難い苦痛を味わい、社会的に十分な制裁を受けたことは疑いを容れないところである。

被告人井上はこのような社会的制裁を受けたのに加え、自らの行為に基因して、被告人会社の建設業者の許可の取消問題を惹起させ、あるいは被告人会社の役員を辞任するのやむないこととなるやも知れず、これがため会社の存続に危機を招きかねない事態が生ずるとの懸念から従業員らに極度の不安感を与えたことになったため、日々堪え難い自責の念にさいなまれている実情にある。

三、被告人会社は東京国税局から本件脱税事件につき告発されたことから、次の通り各行政機関から指名停止処分を受けた。

(一) 平成五年五月一八日付通知、関東地方建設局、指名停止期間一カ月

(二) 同月二四日付通知、山梨県土木部、 指名停止期間右同

(三) 同日付 通知、韮崎市、 指名停止期間右同

(四) 同日付 通知、白州町、 指名停止期間右同

(五) 同月二八日付通知、高根町、 指名停止期間右同

(六) 同月二三日付通知、長坂町、 指名停止期間右同

(七) 同月三一日付通知、武川村、 指名停止期間右同

(八) 同月二五日付通知、明野村、 指名停止期間右同

(九) 同月三一日付通知、峡北地域広域水道企業団、 指名停止期間右同

被告人会社は約九〇パーセントを山梨県及び、韮崎市並びにその周辺の地方公共団体発注の公共事業を請負い施工していたが、右のごとく公共事業が指名停止により入札し得なくなったことによる損害は多大であるのみか、右公共事業のほかは東京電力株式会社を中心とする民間企業から土木事業を請負っているものであるが、右東京電力からは一旦は釜無川第一発電所頭佐沢調整池バイパス水路改造工事等につき発注を前提とする見積依頼を受けたのに拘らず、被告人会社及び、被告人井上が本件につき起訴されたことから、東京電力はこれを理由に工事の受注を辞退するよう被告人井上に勧告をなし、これを受けて被告人井上は同社に対し、右見積依頼に関する辞退願いを提出して右工事の受注を辞退したこともあり、この事例に代表されるごとく、主な民間企業の工事につき、本件が原因となって受注が不可能になった事態が多発し、本件が受注活動に多大な影響を与え、被告人井上が計り知れない苦渋を嘗めたのである。

四、当職が原審における弁論で陳述したごとく、平成元年五月期における正規の法人税額が金五一、七一二、〇〇〇円であるのに対し、脱税額が金一四、六九四、五〇〇円であって、その脱税比率が二八パーセントであり、又平成二年五月期の正規の法人税額が金一四、九四四、三〇〇円であってその脱税率が三四パーセントであり、さらに平成三年五月期における正規の法人税額が金三三、三五六、五〇〇円であるのに対し、脱税額は金一九、四七八、七〇〇円でその脱税比率が五八パーセントであることから、平成三年五月期における脱税比率がやゝ高率であるものの、その平均比率は四〇パーセントにとゞまるのであるから、本件は脱税比率からみてもさして悪質でなく、加えて前述のごとく脱税額はさして高額でなく、かつ所得隠蔽の手段でもさして悪質性は認められないのである。

被告人井上はさして高額でない所得を隠蔽したものであり、かつ、脱税の目的も被告人の老後や子供の将来のため少しでも財産を残しておきたいというさゝやかな意図のため本件犯行に及んだものであるが、本件により被告人井上が被った社会的制裁と精神的苦痛は十分同情に価いするものであり、また財産的損害は全く評価換算が不可能な程重大であって、その犠牲は極めて多大である。

第三 おわりに

本件はさして多額でない取引の中から、小額の経費水増等の操作を行い、これによって少額な架空損金等を積み重ねた結果の犯行であって、その犯行の規模、犯行の態様は決して悪質ではなく犯情軽微であるうえ、重ねて申述するならば、被告人井上の受けた社会的制裁と精神的苦痛等の諸事情を勘案するならば、被告人井上に対する原判決の量刑は重きに失し不当であると思料されるので破棄のうえ、建設業者の許可の取消に関する建設業法の適用を受けないよう格別なご配慮を賜り、被告人井上に対し懲役一年未満の刑の言い渡しを願い度く深く陳情するものである。

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